中小IT企業のSEが、会社とサッカーチームと恋人との時間を行き来する、日常世界を描いた小説です

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第57話

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 楽園での集いに一区切りがつき、メンバーは梅木の声かけによって、「二次会カラオケ行き隊」と「元気ないから帰り隊」とに別れた。
 俺は「元気ないから帰り隊」。いや、元気はまだあるんだけど、次の予定があるわけですよ。
 俺は、ジムニーに乗って、次の目的地に向かう。大丈夫、これに備えて、さっきまでの飲み会の席では、アルコールを入れていないから。
 10分程度ジムニーを走らせて、唯華のアパートに到着した。彼女に携帯をかける。
「今、着いたよ」
「わかった。すぐ行く」
 その数分後、彼女はジムニーの助手席に座った。
「今日はこれからどこ行きたい?」
「ハルちゃんはどこがいい?」
「俺が選んでいいの?」
「うん」
「それなら、そうだな……海でもいいか?」
「この前と一緒じゃん」
「嫌なら別の場所を考えるよ」
「わかった。ハルちゃんがいいならそうして」
「もう夕飯は食べたんだよね?」
「うん」
「じゃ、飲み物だけコンビニで買っていくか」
「うん」
 俺たちは、先週の練習後と同じように、まずは近くのセブンイレブンへ向かう。コーラを買う。それを時々口に含めながら、海のほうへジムニーを走らせる。
「今日の飲み会は楽しかった?」
「あぁ、梅木さんがいつも以上に暴走して、おもしろかったよ」
「それ、私も見てみたいなぁ」
「それなら、今日は顔出せばよかったじゃん。別に仕事ってわけでもなかったんだろ?」
「私はいいの。こういうときは、男だけのほうが盛り上がるから。私が行ったら、どうしてもお互い気を遣うと思う。ハルちゃんもさ、私が参加する女子会に顔出してって言われても、ちょっと気を遣うでしょ?」
「まぁ、そうだな」
「それと一緒だよ」
「なるほどな」
 俺は、「でも、今日は来なかったけど、真田さんはこういう場には結構顔出しているよ」という台詞をコーラと一緒に飲み込んだ。
「飲み会の話、もっとして」
 唯華は、自分は意図して顔を出さなかった飲み会の話をせがんできた。
「楽しい話は好きだよ」
「わかった。楽しい話は俺も好きだしな」
 俺はあまり深く考えずに、脳内のメモリーに残っている、クロワッサンズの男祭りの様子を録音再生する。

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