中小IT企業のSEが、会社とサッカーチームと恋人との時間を行き来する、日常世界を描いた小説です

トップページへ

第50話

前へ  次へ

「お、元気いいわね。みんなー、狩野くんが来たんだけど、代わりたい人いる? 代わりたい人は手挙げてー」
 唯華が、喜びに湧く俺たちに声をかける。もうちょっと空気読めよ。まだ後半は始まったばっかだし、今のこの雰囲気の中、抜けたいやつなんかいねぇよ……と思ったが、由雄とナンが手を挙げた。というかさ、ナンって、「ワタシ、マダ、ニホンゴ、トクイジャナイ」なんじゃなかったっけ? しっかり理解できているじゃん。まぁでも、戦力的には、彼が代わってもらうのが一番いいのか。
「OK,Please change with him」
 日本語がダメでも、留学生である以上、英語なら会話は成立する。俺は、身振りを交えて、拙い英語で何とか狩野と交代することを伝えるよう努める。だが、由雄がそこに割り込んできた。
「ちょっと待って。俺、急に腹痛くなってきてさぁ……ハーフタイムに水飲み過ぎたかなぁ。若干、ウンコ行きたいかも」
 由雄は、腹を押さえながら、そんなことを言ってきた。
「真面目に言ってる、それ……?」
「うん、マジ」
 おぉ……結構、切実な訴えかけるような表情になっている。これは、マジだ。
 俺たちがやっているのは、あくまでも趣味レベルの草サッカー。こんなことも、あり得てしまう。それを改めて胸に刻み込む。
「わかった……由雄が交代で、狩野入って」
「了解っす」
 狩野は、手早くユニフォーム姿になる。
 俺は、ナンに向き直った。
「Sorry,you can not change. Because,he wants to go...ウンコ!」
 由雄を指差してそう言うと、ナンは「OK」とスマイルで応えた。

セパタクローボール 緑

前へ  次へ

inserted by FC2 system