中小IT企業のSEが、会社とサッカーチームと恋人との時間を行き来する、日常世界を描いた小説です

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第38話

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 俺たちの今日のシステムは3-5-2。
 キーパーは充で、ディフェンスは左から、チーム1の俊足を誇る島秀彦、野島、俺。
 中盤はボランチに伊沢、サイドは下がり目に位置するウイングバックという形で、左右にそれぞれ梅木、由雄。前2人はミックと……小野塚さん。下の名前は、まだ知らない。とりあえず今知っているのは、野島の会社の先輩で、元々はフットサルのシーズンに入ってからの加入を予定していたのだが、野島から昨日「試合の人数が集まらない!」と連絡を受けて、急遽今日から、半ば強制的にご参加いただくことになった、ということだ。
 本人曰く「一応、小、中学生のときはサッカー部でした」
 いやぁ、すみません。いきなり無茶に付き合わせてしまいましたが、よろしくお願いします。
 フォワードは、ナッシーとナン……えーっと、ナンというのは、ミックが連れてきてくれた後輩のタイ人留学生だ。とりあえず、ミック以外誰も面識はないが、決してインドのパンのことではない。
 サッカー経験はなし。そして、日本に来て間もないそうで、本人曰く「ワタシ、マダ、ニホンゴ、トクイジャナイ」
 カッコいい……そんな状態でよくぞ来てくれた。これはミックの人柄によるところなのだろうか。屈託のないスマイルが目にしみる。さすが微笑みの国。
 今の状況では難しいのだろうけれど、スコアのことは気にせず、サッカーを楽しんでくれ。今日をきっかけにサッカーを嫌いにならないでくれ。彼に対してはそうとしか言えないわ。
 何というか、一歩間違えれば、先週のエルフシュリットみたいに、人数が足りない状態でキックオフを向かえることになったわけだ。それが回避できただけでも、よしとしなければならないか。

夢をかなえるサッカーノート

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