中小IT企業のSEが、会社とサッカーチームと恋人との時間を行き来する、日常世界を描いた小説です

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第33話

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 唯華と一緒に、夜の砂浜に出てみた。
 より鮮明に聞こえてくる波の音。そこへ、ほのかな潮の香りも加わる。
 海はやはり海だった。
 浜辺を歩いていると、唯華は仲のよかった友人の話をし始めた。
 誰にも心の闇を打ち明けないまま、自ら命を絶った友人の話だった。
「人は周りが気づかぬ間に、いとも簡単に折れてしまう」
 何となく、今日の伊沢への接し方につながった気がした。
 闇夜の砂浜で、世界の最果てにいるような感覚を共有した俺たちは、夜のピクニックを切り上げた。
 唯華のアパートへ戻り、唯華の部屋に入り、温かい唯華の中に入った。
 子供を産んでほしい。
 彼女を抱いていると、そんな感情が芽生えてきた。
 抑制することなく、そのための行為をした。
 唯華は、敏感に反応した。重ね合わせている肌を通じて、少なくとも体では悦んでいることが、確かに伝わってきた。

To The End Of The Earth

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