第13話
日曜日。今日は佐賀岡市市民リーグの第11節だ。 12チームの1回戦総当りで順位が決まるこのリーグは、今日を含めて残すところあと2節。俺たちクロワッサンズは、首位から勝ち点差5の4位につけている。 Jリーグと一緒で、試合に勝てば勝ち点3、引き分ければ勝ち点1、負ければ0。最終節に首位のチームとあたるし、優勝のチャンスはなくはない。が、彼らとの戦力差を考えると、正直厳しいところ。今日彼らが勝ってしまえば、もうチャンスはなくなるわけだし。 悲観しすぎている? 違う、俺は現実を見ているだけだ。プロなら「奇跡を信じてやる」なんて言わなきゃなのかもしれないが、俺はアマチュア。というかプロだって、今の俺と同じ状況下に置かれたら、内心無理だと思うはずだ。 ジムニーを試合会場となる黎明大学グラウンドへ走らせる。 俺が着いたころには、すでにクロワッサンズのメンバーたちはレジャーシートを敷いて、グラウンドの一角を陣取っていた。そして驚いたことにも、いつもは遅刻組となるはずの唯華の姿がそこにあった。 「おーそーいー」 唯華は、俺を指さしながら言った。 「まさかお前に言われるとは思わなかったよ……今日はどうしたんだよ?」 「どうしたんだよ、じゃないだろ。優勝を争うチームが試合やってるのに」 今度はピッチのほうを指さした。 念のため、ピッチに目を向けてみる。今日は俺たちの前に、リーグ首位を走る黎明大学サッカー部が、リーグぶっちぎり最下位のチームと試合をやる日程となっている。要するに唯華は、黎明大学サッカー部の結果によっては優勝の可能性があると言っているのだ。 だがピッチ上は、黎明大学サッカー部が相手を一方的に攻める展開となっている。それはそうだろう。黎明大学といえば、天皇杯にも県代表として何度か出場したことのある、県内ではトップクラスの強豪だ。このリーグでプレーしているのは、控え選手や2軍が中心という話だが、今年から参加した素人の集まりのようなチームが、まともに張り合えるわけがない。まるでサッカーになっていなかった。 「今のスコアは?」 「6対0」 予想通り、大差になっていた。 「結果は出たようなものね。優勝するには、今日はもう勝つしかないわ」 「は? お前、何言ってんだ。黎明大学が勝っちまったら、その時点で俺たちの優勝の可能性はなくなるんだけど」 「え、ウソ……勝ち点差って2じゃなかったっけ……?」 「残念。実は勝ち点差5だったんだ」 「あ、そ……」 唯華は黙る。 「ナイッシュー」 黎明大学に7点目が入る。ほんの少し、気まずい空気が流れた。
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